大山崎春茶会「明前雨前」
2006年4月22日(土)、23日(日)

茶烟軽颱落花風
(茶烟、軽くあがる、落花の風)

春爛漫の日、花を眺め、茶を沸かしていると、
暖かい風が吹き、しずかに花を散らす。
沸きはじめの茶から立ち上がる煙も、
その風に吹かれ、僅かにたなびく。
やがて、往く春を分かつ静かな雨が訪れ、
遠い深山の、遅吹きの茶の芽も、
はや、長じてゆくのであろうか。

監修:中国茶会 黄安希
茶藝:宮桂子、佐野陽子、野口恵未、下地静子、二宮奈美恵、中山真記子、金子美抄、横山由理、工藤和美、藤永絵美子、宇野敦子、上田雅子、清川久充子、藤田昌子、古川宏美、道田あずさ、西村沢子、川西万里、下農千晶、佐藤かおり、寺井美和、堀口一子、原未来子、栗川智香、黄研、黄安希
於:アサヒビール大山崎山荘美術館
文責:黄安希

明前席(茶室 彩月庵にて)
四月二十二日
西湖龍井(浙江省杭州市 西湖畔産)

西湖畔を去る周囲四、五里の、山岳連綿として囲む所に産し、清明節(四月五日)までを「明前」と称して、第一季とし、清明節から穀雨(四月二十一日)までを第二季として「雨前」と称する。茶摘みは十五、六歳までの指先がやわらかい女の児が行う。葉が尖って扁平につくられ、味が清らかで、青豆を炒るかの香りに、水色清く、茶は緑で色が変わらず、富貴の人でも喫し得ざる処。味、形、香、色の「四絶」を極まるとされています。

四月二十三日
黄山雀舌(安徽省黄山市徽州区産)

世界遺産に指定を受けている幽玄たる山、黄山。そのふもと一帯において採集されるお茶で「黄山毛峰」とも呼ばれるが、特に清明節までに茶摘みされたものは「雀舌」と呼ばれる。茶葉がとても小さく、一つの芽芯にかわいい二枚葉がひらく様子が、雀が口をひらいて舌を出すさまに似ているから、とか。白い産毛がところどころに見られ、黄色がかった緑の葉。ほのかに栗のような香りがし、遠くのほうに香ばしい甘みがあります。

雨前席(茶室 トチノ木亭にて)
四月二十二日
緑牡丹 (安徽省黄山徽州区産)

黄山雀舌が成長すると、小さな黄色の芽芯が大きく開き、緑色の大きな一枚葉に成長します。その茶葉を丁寧に集めて真ん中を糸でかがり、かわいらしいブローチのような形にまとめたのが、緑牡丹です。お湯に入れると、牡丹の花が開花したかのように、ふんわりと大きくふくらみます。このようなお茶を「工藝茶」とよばれ、ひとつひとつが手作りされ、姿の美しさでも飲む人を楽しませます。「牡丹」の花は、中国では、「富貴」をあらわすそうです。

四月二十三日
白牡丹(福建省福州市産)

茶樹の中で、白く芽をふく品種があり、「白茶」と呼ばれています。
白牡丹は、白茶のひとつです。芽の部分は産毛におおわれ、細長い葉は柔らかくたおやか。お湯に入れると手折ろうとして、はらはらと散ってしまった豪奢な牡丹の花弁を集めたかのようで、落花の風情と、行く春を名残り惜しむ、晩春の景色がそこにあらわれます。

春書席(蓮池前の前庭にて)
四月二十二日 二十三日共
高山雲霧(浙江省桐濾県産)

春のことばをお客様に一言書いていただきます。その居並ぶ春のことばの数々をながめていただきながらの一服です。お茶は高山で収穫された細かくちじれた形の緑茶。あふれる緑をしずくにしてしぼったような、甘く芳醇な香り、細かい幼葉ならではの、ほろ苦さです。
茶器は瓢箪型。仙人がもつような不思議な形をしており、湯をいれて茶葉を上から落とす「上投法」という手法でお茶をいれます。

苦茶席(大木前の前庭にて)
四月二十二日 二十三日共
苦丁茶幼葉(海南島産)

中国では、春先に苦いものをからだに積極的に取り入れようとする習慣があり、冬の間に体内にためられた毒素を排出し、冬から春へと体をシフトしてゆくのです。苦丁茶は、茶樹ではなく、オトギリ草という植物の葉から作られますが、湯に落とすと、目がさめるような、鮮やかな黄緑色葉になります。茶杯に注いだ水色は、ヒスイをおもわせるような碧色。「玉を溶かして飲み、長寿を得る」とはこのことかと思わされるほど。しかし、味わいは苦く、熱いのに身体がひんやりとするような、不思議な飲み心地なのです。 

四月二十二日 午後一時より、胡弓と詩による即興をおこないます。
四月二十三日 午後一時より、胡弓と中国古典詩の朗読、点茶による「曲水の宴」をおこないます。

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