
大山崎秋茶会「清風万里秋」
2005年10月22日(土)、23日(日) 霜降
昨夜一声雁
清風万里秋
昨夜、雁が一声鳴いたのを聞き、
清らかな風吹き抜ける、
秋の到来を知る。
監修:中国茶会 黄安希
茶藝:藤田里子、正井彩香、中村里子、大矢真由美、原田江実、大塚美雪、西村沢子、横山ゆり、堀口一子、原未来子、道田あづさ、胡有紀、吉野浩子、曽根綾恵、小倉康代、宮桂子、栗川智香、近藤久美子、横山晴美、藤永絵美子、中井由香、西川久美子、黄研、黄安希
於:アサヒビール大山崎山荘美術館
文責:黄安希
秋摘茶席 安渓鉄観音(茶室彩月庵にて)
中国茶の中には、緯度や気候の関係から、秋にも新茶の収穫がある地域があるのです。福建省も秋摘み新茶がとれる場所。お茶の木は常緑樹ですから、一年を通じて緑の葉を茂らせますが、春の茶葉はやわらかく繊細、秋冬の茶葉は厚みがありしっかりした手ざわり。「香りの春茶、味わいの秋茶」といわれるように、秋頃の茶葉は、来るべき冬を前に霜枯れしないように養分が高まります。味が深く、甘みも渋みも濃厚、香りは「乳香」とよれるくぐもったバニラやミルクの香りがします。お茶も季節のうつりにあわせて、風味が熟してゆくのです。
茶 安渓鉄観音 2005年秋摘(福建省産 青茶)
登高茶席(小高い場所で里を見下ろす) 採菊茶(美術館二階バルコニーにて)
菊の花を自分で摘んでお茶にしてみませんか。菊を摘んだ指先にも清浄なよい香りがつきます。その菊を、きれいな山の湧き水で洗い湯をさして飲みます。中国では菊花には「永遠」「長寿」の意味があるのです。特に旧暦9月9日(新暦の十月十一日頃)は、「重陽」といって、この日に菊花のお茶やお酒をいただくと、延命長寿にあやかれるとのことでした。また、高い場所に登るとわざわいが追いかけて来ないとのことで、古来から中国人々は「登高」といって、見晴らしのよい場所に登り、秋のさわやかな空の下で菊をうかべたお茶やお酒を楽しんだのです。美術館の二階バルコニーにて登高気分を。本当、大いに命がのびるようですね。
茶 菊花茶 山形「もってのほか」無農薬食用菊
桂花席(美術館 前庭にて)
秋を告げる香り花、「金木犀」。このよい香りのする花を、中国では蜜煮にするのです。「桂花醤」とよばれるこのジャムは、お菓子に用いたり、湯をさして飲み物に仕立てたりお茶に一匙加えたり。会場にて、金木犀に蜂蜜とお砂糖、金木犀のリキュールをいれて煮詰めてゆき、ジャムを作ります。
花湯 桂花醤 (金木犀生花 広東省の乾燥桂花 蜂蜜 桂花陳酒)
中国紅茶席(美術館 前庭にて)
「アフタヌーンティ」のことを中国語で「下午茶」といいます。秋の昼下がりの斜陽の日差しの中、濃い風味で体をあたためてくれる紅茶は、しみじみとおいしく感じられます。世界の紅茶の発祥は、「ボヘア」と呼ばれる、中国、福建省北部、武夷山近辺の鳥龍茶を、強化発酵させて生まれたという説があり、紅茶のはじまりは鳥龍茶だったのだそうです。さまざまな香りと味わいの、オリエンタルな風味をたのしんでみましょう。桂花のジャムをいれてロシアンティのようにして頂くのも、また一興。
(二十二日、二十三日でお茶が変わります)
茶 中国紅茶各種
シ眞紅金針 雲南省産。秋の残照のようなオレンジ色の産毛が見られる、芳醇な紅茶。
宜興紅茶 江蘇省産。青いぶどうのような香りがする、さわやかな酸味のある紅茶。
正山小種 福建省産。松を焚いた煙で、紅茶に香り付けしたもので、独特のスモーク香がある。
枯緑席 (茶室 トチノ木亭にて)
春先に収穫される瑞々しい緑茶は、夏過ぎて季節移ろい、色や味わいも枯れてゆきます。お茶を焙じるかわいらしい道具を用いて、名茶を焙煎してみましょう。焚き火を思わせるようなかんばしい香りと、炒った茶葉にお湯をいれたときのジュッという音も聞いてみてください。
(二十二日、二十三日でお茶が変わります)
茶 中国緑茶各種
明前西湖龍井 浙江省産。きなこのような香り、扁平な形。清代乾隆帝の献上茶の歴史があり、名実ともに中国緑茶の雄。
六安瓜片 安徽省産。唐代から今に伝わる。茶葉の形が瓜の種の形をしていると事から名付けられた。
蒙山甘露 四川省産。仙人が住む山とされる「蒙山」で収穫される早春茶。漢代(今から二千年以上前)より、製茶されていたそうです。
