【十一月のご挨拶】



 
 早、立冬過ぎて、季節の流れも早いもの。
 先月に行った北京ツアー、おかげ様で
 良い旅の思い出がたくさん出来ました。
 その時に行ったお茶會「北京茶會」について記します。

 茶會を行った会場は、嵩祝寺という場所で、
 北京の中心部にあり、清代乾隆帝によって
 昔の漢籍工場から寺へと改築されました。
 高い天井、太い赤い柱が紫禁城の建築にも似て、
 今から300年ほど前の建物です。

 清、第6代皇帝、乾隆帝の世は、清が最も強大となり
 落ち着いた治世が行われました。
 六十年間も皇帝として、八十八歳まで長生きをしました。
 国庫も潤沢で民衆に対しては減税で返還したため、
 庶民の暮らしも活気付き、この時代には
 さまざまな娯楽や美食も生まれます。

 乾隆帝は、歴代皇帝の中でも群を抜く
 茶好きで知られていました。
 「君一日不可無茶」
 君子は一日も茶なしではいられない、といい、
 最も愛好したとされるのが、杭州の龍井です。

 もう一つ、乾隆時代に花開き、庶民から皇帝まで
 愛好されたものが京劇です。
 京劇は、元々、安徽省の地方演劇で、
 北京で公演をするうちに人々の支持を得て、
 北京の演劇、という意味の「京劇」と名を変え、
 親しまれるようになります。
 乾隆帝の八十歳の誕生日は、京劇でお祝いしたという事です。

 これらの背景を踏まえて、お茶會では、
 老北京人が愛好する茉莉花茶で迎茶を行い、
 乾隆時代に盛んに用いられた茶器、大ぶりの蓋碗を用意し、
 一客一客が全て違う柄のものを並べお手前を行い、
 これで皆様にお茶を召し上がっていただく事にしました。
 乾隆帝は、派手好みだったのか、或いは当時の宮廷の流行か、
 この時代の茶器は色鮮やかで、黄色をはじめとし、
 赤、青、緑、ピンクと非常に色とりどりです。
 普段のわたしのお茶では、あまり用いない取り合わせでしたが、
 広い会場では、小さく地味な茶器などは消し飛ぶようで、
 大ぶりであざやかな色調が、仄暗い古寺の中、
 光を放つようでありました。
 蓋碗茶の中見は龍井茶。
 それをいただきながら、京劇を見ていただくという趣向です。

 間近で見る京劇は、役者の化粧や表情、身体の動きなど、
 素晴らしい迫力で、劇場で見るとは全く違います。
 お茶を飲みながら、京劇を見るのも、
 清代から伝わる遊びの一つなのです。
 観劇の最中に、秋の北京名物、松の実や棗、杏仁、
 栗を焼き込んだお菓子を、茶會会場で
 デコレーションを仕上げて、お配りします。
 最後に、やはり乾隆年間より作られはじめた
 福建省の安渓鐡観音に、陳皮を入れて煮たものを、
 おしまいのお茶としてお出しし、幕を閉じました。

 この会場の上部には、
 「団結緊張厳粛活動」と
 文化大革命の時代のスローガンが残されています。
 1970年代に、この寺は一時、宗教活動を停止する事を
 余儀なくされ、国営テレビの組立工場となりました。
 その歴史からも、早50年が経ち、
 寺は歴史的文物保護の対象となって、
 史実が積み重なった景色へと変化しています。

 遥かなる歴史の重なりの中に身を置きながら、
 唯一お茶というものの安寧、過去から今まで
 変わらず人々の心身の有り様を良くするという事が、
 タイムスリップの仕掛けとなるのかも知れない。
 そんな思いで作った茶席でした。

 ご来場いただいた日本、及び北京の方々。
 お世話になった京劇の役者さんや得難い機会を
 形にしてくださった現地スタッフの方々に深謝を申し上げます。

 二〇二五年 十一月立冬
 中国茶会 無茶空茶
 黄 安希 拝




        

        





 【中国茶会 無茶空茶 十一月の行事】


「和の花と中国茶」
 11月26日(水) 14:15〜、18:00〜 [要予約]

 無茶空茶教室内において
 季節のお花のお稽古を月一回行っております。
 月毎に花の名前、種類、取り合わせ方、
 花とお茶の関係性なども学びながら、
 身近に花がある暮らしが自然となります。

 季節の行事に合わせて、
 お正月の門松作り、お水取りの紙椿の糊こぼし作り、
 茶道具削り、茅の輪作り、重陽の被せ綿、
 クリスマスリース作りなど、
 多岐にわたる花工作も行っております。
 花器をかえて、二杯分いけていただいたのち、お持ち帰りいただきます

 持ち物は、鋏をお持ちなら鋏のみ。あとは何も必要ありません
 鋏をお持ちでない方はご用意があります
 中国茶をお出しいたします
 お茶と花の時間、ご参加をお待ち申し上げます

 毎月最終水曜日
 〈1〉14時15分から
 〈2〉18時から

 受講費 各回 9,000円。
 *教室にお入りになる際は靴下着用をお願いいたします。

 *予約方法 メールにて承ります。受付は開催日前日の正午まで。
  無茶空茶からの返信をもって予約完了となります。
  予約先 muchakucha@nifty.com (無茶空茶)

 講師 朝倉 啓
 1985年に大阪府で生まれる。父親の生花店を継ぎ、
 現在は日本料理店や茶会を中心に、床の間や店内のしつらえを担当し、
 日本の四季や節句を大切にした作品がプロから高い支持を得ている。

 





「太極拳と朝のお茶」
 毎月第四日曜 朝8:15〜10:30ごろ [要予約]

 無茶空茶、三晃ビル屋上テラスにて開催しております。
 朝茶。
 太極拳。
 中国の朝御飯を整えて、お待ちしております。

 清々しい朝の空気を吸い込んで、気を巡らせましょう。
 太極拳は、目一杯まで力を込めず、いかに深くゆっくりと呼吸をし、
 一歩手前で力を緩めるか、に留意するため、
 頑張りすぎない事を学びます。
 頑張らないことにより、余力を次のアクションに転回し、
 体内のエネルギーを隅々まで行き渡らせるのだそうです。
 お子様のご参加も歓迎します。
 初心者の方対象です。

 受講費 4,000円。
 *当日朝8:00に三晃ビルの裏口にて集合、時間厳守でお願いします。
 *当日はウッドデッキにて太極拳を行います。室内履きをご用意ください。
 *朝食時、教室にお入りになる際は靴下着用をお願いいたします。
 *午前中から暑くなる時期です。上履き、日よけの羽織など各自ご用意ください。

 
 *予約方法 メールにて承ります。受付は開催日 前々日の正午まで。
  無茶空茶 太極拳からの返信をもって予約完了となります。
  予約先 suuhaa.taichi@gmail.com (無茶空茶 太極拳)
 *キャンセル料について 開催日前々日までのキャンセルは50%、
  前日&当日のキャンセルは100%、受講費が発生いたします。

 *写真は2023年10月の様子です

     






 【中国茶会 無茶空茶 茶会の記録】 *2023年11月8日更新

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 【茶会 アーカイブ一覧】
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 「茶會 清明踏青会」
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 「擬似香港飲茶會」
 「平成令和茶会」
 無鄰菴茶会 第二回「大重陽、小仲秋」
 無鄰菴茶会 第一回「夏至睡起」